ジョイント口座の高裁判決が意味するもの

2名以上の共同名義人で開設するハワイ州のジョイント口座が相続財産となるかが争われた訴訟で、子である相続人からの相続分の支払請求が棄却となった(東京高裁判決261120)。

預金契約がハワイ法により規律されることから、私法上の問題は、ハワイ州法により決定される。

ハワイ州法においては、生存名義人に帰属させないとする意思の存在を裏付ける明確で客観的な証拠等がない限り、生存名義人に帰属すると定められている。

また、州法では、死亡により自動的に死亡名義人の財産を生存名義人が取得するとされ、いったん死亡名義人の遺産を構成するわけではない。

よって、ジョイント口座は直ちに生存名義人の財産になり、相続財産を構成しないことになる。

さて、私法上相続財産を構成しないとなると、税法の適用に関してややこしいことが生じる。

保険と同じく、共同相続人が一時所得を取得したことになろう。私法上の相続財産でない以上、みなし相続財産でもないことから、相続税の課税対象ではないということになるからである。

「お尋ね」の記載が重加算税に影響するか(大裁(諸)平25第51号)

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1.お尋ねに対して、遺産の一部を除外して記載し、申告不要であると回答した納税者の行為は、重加算税を構成するか。

2.無申告加算税と別に重加算税が設けられているからには、重加算税の「隠ぺい仮装」と言うには申告しないこと以上に、「申告しない意図を外部からもうかがいうる特段の行動」をとることが必要である。

3.お尋ね書の送付は、相続人に対する相続税の課税関係の照会手続きである。

4.相続人は、これに対して、申告の要不要を検討し、不要と判断した場合にはお尋ねの回答書のみを課税庁に提出することになる。このことは、相続税の課税関係に関する基礎事実を認識しながら、あえて申告をしなかったことを意味する。

5.あえて申告しなかったことは、無申告と同等の行為であるから、これだけで隠ぺい仮装というには足りない。

6.遺産を相続人名義に変更したことは、相続手続きとして通常の行為であるから、これが上記の「特段の行動」に該当することになるわけでもない。

7.多少の計上漏れがあったとしても、記載されている分だけで十分に課税庁が相続の必要があると推測できる金額になっている以上、過少計上したことが「特段の行為」に該当するということもできない。

8.以上、本件の事実関係だけでは、重加算税の付加要件を満たすということはできない。