国際的な税務の問題を実務的に扱うようになって三年が経ち、多少は処理ができるようになってはきた。国際「的な」税務の問題、と言うのは、日常的な税務問題はすべて国内法の問題であって、国際法ではないからだ。
対象者の居住地国がタイなのか、日本なのか。PEに該当する事実があるのかないのか。所得の種類は何なのか。該当する行為はどこで行われたのか。行為の目的物はどこに所在するのか。電子取引の場合には、サーバーがどこにあるのか。金融取引の場合には、契約がどの支店に帰属するのか。通貨は何なのか。源泉所得税はかかるのか。VATはかかるのか。二重課税の回復措置はあるのかないのか。
このようなことを調べて、法の適用関係を確定し、各国の法律に当てはめて助言する。そう。国内法がどのように組み合わされるかを考えるのが国際的な税務というものの内容だ。
さて、そうすると国際租税法とは何だろうか。国際法の規律する租税分野ということになると、典型的には国と国との租税に関する争訟事件が想起される。
①貴国は、タックスシェルターを容認しているから、改めよ。これはOECDの言う「有害なタックスコンペティション」。法人税や所得税はもちろん、付加価値税も、相続税やキャピタルゲイン課税などは、随分と国によって方針が異なる。
②貴国は、当国の課税権を侵害している。これはおおむね、移転価格の権威ある当局間の交渉となる。EUのように、域内の共通化を目指すことにも発展する。文書化義務などの国内法の形で、我々に関係してくる。
③貴国は、管理が甘いので、改めよ。広い意味では、こんなのも該当してくる。マネロン規制テロ規制などの銀行口座規制。スイスの銀行が壊滅状態になったとも言うから、深刻だ。EUのように、入出国の管理を協同して行うこともある。通関の規制なども関連している。我が国は、マイナンバーも徹底的に実施する優等生だ。
④貴国は、保有する当国レジデントの情報を開示せよ。最近は租税共助条約が盛んに締結されている。
⑤①の変形で、貴国が放棄している課税分野を当国が課税していいか?という新しいジャンルが登場する予感がする。空に見える星の売買のようなもの?
租税は、国家権力の典型的な一部であるが、ボーダレスの嵐の中で、重要な国際法領域を形成しつつあると思われる。
当事務所のクライアントは、一般の私人でしかないのは言うまでもない。私人が国際法の規律といかに関わっていくか。おもしろくなってきたところだ。