海外の子会社から日本で雪に埋もれていた私に仕事の依頼が来た。
クライアントがマレーシア経由で、あるヤンゴンの企業を買うという。
MAの仕事は、嫌いではない。実は、大好きといってもよい。
英語のレポートにしては値段がずいぶん安かったが、一も二もなく二つ返事で引き受けた。
買収先の会社がビッグ3の一つにバリュエーションを依頼したということで、私の仕事はリ・バリュエーション、その仕事の再評価である。
巨大企業の一部を切り取ってJVにするらしく、なんとも掴みどころのないバリュエーションだった。突っ込みどころがたくさんありすぎる。
類似業種比準価額は、S&P(キャピタルIQ)から8社のデータを選択していたが、規模の違いもさることながら、類似する業種とはほど遠い。値段を叩かれたら仕方がないが、もう少し何とかならなかったか。
取引事例比準方式は、事例が4つしかなく、説明が非常に苦しい。
プライマリがマーケットアプローチなのである。
セカンダリでDCFを採用しているが、事業計画の数値が空虚極まりない。レガシーサービスが終焉を遂げ、新たなサービスが盛り上がってくるというが、夢のもてる話がどこにも書いてない。なぜかEBITDAの外でキャッシュフローが水増しされ、挙句の果てに、WACCで割り戻す際の月数計算が誤っている。しかも5年後のターミナルバリューの割り戻し調整も操作されている?
私は単なるセカンドオピニオンしか述べられないので、柔らかく指摘するにとどめたが、もしこれが中小企業であったら、絶対にやめなさいという事例に違いないであろう。買い手の企業は、もちろん素晴らしい人材をそろえた上場企業である。
指摘したところをきっちりとフィールドワークで解決してほしい。契約するのはそれからである。